精神科、統合失調症、メンタルヘルス、うつ病、心療内科
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見捨てられる患者

神病院で勤務し始めて他の科では経験できないような体験をたくさんしてきた。レイプあり、虐待あり、放火あり、殺人あり。「現実は小説よりも奇なり」なんて言葉もあるけれども、こんなにもたくさん奇妙なことが世の中にはあふれているのかと驚く。

 

 

精神病院と聞いてどんなことを想像するのだろうか?

 

 

勝手なイメージだが、優しい先生がどんな患者の話でも丁寧に聞くイメージを抱いているのではないだろうか。

 

 

働いてみて分かったことは、そのイメージはYESでもありNOでもある。他の科にくらべたらそもそも患者の話に耳を傾ける科であるし、それが仕事なので色々なスキームを使って話を聞いていく。

 

 

もそも精神科は手術など特殊な技能を使わない。 精神病院の患者あたりの単価はどうしても安くなってしまう。病院側としては採算をとるためには一人の医者にたくさんの患者を診察させなければいけない。医者といえどサラリーマンなのでゆっくり時間をかけて患者を診たいと思っていても、病院の管理者のいうことを聞かなければいけない。管理者が外来に患者を詰め込んできたら、それにあわせて渋々診察しなければいけない。

 

 

1時間待ち5分診療のできあがりだ。医療費は今後締め付けられるので、今後さらにひどくなっていくだろうなあと思う。

 

 

そもそも精神科医の外来でゆっくり話を聞いてもらおうとするのは間違いだ。医者は薬をだし、大まかな治療方針を出すのが仕事だ。リハビリやカウンセリングは心理士や看護士などの仕事なのだ。

 

 

神科医も人の子である。どんな薬を使っても効果がでないで、常に破天荒な行動をし続ける患者は見捨てられる。

 

 

私が研修医をしていた頃の話だが毎日のように先輩の後ろをついて教えてもらっていた。先輩は優しく、患者の話を忙しい中でも聞く人だった。

 

 

そんな外来の一コマ。50代女が急いで診察室に入ってきた。白髪は伸ばし放題でガサガサしている。服は何週間洗っていないのだろう、、、。入ってきてすぐにしゃがみこんで泣きはじめるのだ。「ワー!!!」大うつ病患者だ。

 

パニック障害を併発しているようでバス、電車に乗れず、自宅から走って病院に通院している。

 

 

呆気にとられている私をよそに、先輩は手慣れたように「まあまあ、まずは椅子に座ってくださいよ。」

 

 

「先生、何で私はこんな病気になっちゃったんだろう!!」

 

 

そんな言葉が聞こえてないかのように、「じゃあ、いつもの薬出しときますね。」

 

「先生助けてーー!!」

 

「じゃあ次回外来は1ヶ月後に予約しときますね。はい、診察は終わりなので帰ってください。」先輩は手で診察室のドアを指しながら平坦な声で言った。

 

 

女は泣きながら納得のいかない顔をして帰っていった。

 

 

「、、、????」ポカンとしている私を振り返りながら先輩はあきれたように言った。

 

 

「開業で辞めた上司から引き継いだ患者でさーー。お前にプレゼントしてやるって言われてね。もしかしたら自殺するかもねーー。でも毎回通院してくるんだよねーー。」あっけらかんと言い放った。

 

 

精神科医も人の子である。どんな薬を使っても効果がでないで、常に破天荒な行動をし続ける患者は見捨てられるのだ。