精神科、統合失調症、メンタルヘルス、うつ病、心療内科

高齢者が生活保護になってしまう理由

生活保護世帯のうち約4割が高齢者世帯

精神科病院で働くようになって生活保護受給者をたくさん診るようになった。精神科病院で働く前までは総合病院で研修医をしていたので生活保護受給者を診る機会は月に数回あった程度だった。

総合病院では、「生活保護」という理由だけで診察室の裏側で看護婦などが「あの人生活保護なんだって。みっともないよね。」とか言っていた。私はそれどころではなく、目の前で起きている症状をどう治療すればいいのかで一杯一杯だったので、生活保護だからどうのこうの、などと余分なことに頭をまわすほど余裕がなかった。

精神科病院で働いていると1日数人は生活保護受給者を診ることになる。彼らのほとんどは怠け者?と感じてしまうほど横暴でハチャメチャな人が多い。そういった人たちを見ていて、生活保護=怠け者!!けしからん!!なんて思うようになった。それが生活保護、貧困に興味を持つようになったキッカケだった。

生活保護について調べてみると実際は生活保護受給世帯の約4割が高齢者世帯であると知って、生活保護受給者だからと言って怠け者ではないということに気付かされた。平成23年の数字でみると、149.2万世帯の生活保護受給世帯のうち高齢者世帯は63.6万世帯にもなる。

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高齢者になってまでも貯金はなかったのか!!何故家計をやりくりしなかったのか!!という方々もいると思う。私自身は20代後半頃からお金は大事だ!ということに気づいて資産管理をしっかりするようになったし、日々のお金の使い方にも神経を使うようになった。

しかし、世間をみていると結婚して数人子供を産むようになってから資産管理、お金のやりくりをしっかり考える人達が多いように感じる。40代前後の頃から考えるようになるのだろう。でも実は40代前後からお金のことを真剣に考えて貯金を始めても遅いのだ。貯金ゼロならまだしも家のローンがあって借金が数千万円ある、、、なんてこともザラで目があてられない状態になっている。

高齢者世帯の貯金額

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上は平成29年総務省から発表された高齢者世帯の貯蓄額を示した図です。右にいけばいくほど貯蓄額が高くなっていきます。縦軸は世帯数です。4000万円以上の貯蓄額がある世帯は12.6%もいることにもビックリですが、貯蓄の中央値が1064万円であることに注目する必要があります。つまり、全高齢者世帯の半分が貯蓄額が1064万円以下ということになる。

 

高齢者世帯の年金受給額

夫:自営業、妻:専業主婦:月々年金110000円

夫:サラリーマン、妻:専業主婦:月々年金260000円

夫:サラリーマン、妻:サラリーマン:410000円

 

国民基礎年金の平均受給額は55000円/人。厚生年金の平均受給額は150000円/人。もし夫が自営業で妻が専業主婦であれば妻55000円+夫55000円=110000円になる。もし夫がサラリーマンとして働いていて妻が専業主婦の場合であれば夫婦で妻55000円+夫205000円=260000円となる。夫婦サラリーマンとして共働きであれば妻205000円+夫205000円=410000円となる。

 

高齢者の月々の生活費は

高齢夫婦世帯の平均支出月額(万円)

直接費・社会保障費:3.2
交際費など:5.9
教養・娯楽:2.6
交通・通信費:2.7
保険医療:1.5
被服・履物:0.7
家具・家事用品:0.9
光熱・水道:2.0
住居:1.8
食料:6.2
合計:27.5

高齢者夫婦世帯の月々平均生活費は27.5万円程度ということが総務省の家計調査報告書で発表されている。

 

高齢者貯蓄額が何歳で尽きるか

夫:自営業、妻:専業主婦:5年4カ月後(70歳)になくなる。

夫:サラリーマン、妻:専業主婦:59年後(124歳)になくなる。

夫:サラリーマン、妻:サラリーマン:生き続けるだけ貯蓄額が増える。

貯蓄額が中央値の1064万円として月々の生活費を27.5万円とした場合の計算です。夫:自営業、妻:専業主婦の場合は悲惨ですね。70歳で貯蓄が尽きることになります。平成23年時点で高齢者世帯は958万世帯があり、生活保護を受給している高齢者世帯が63.6万世帯なので、高齢者世帯の約6.6%が生活保護を受給していることになります。夫:自営業、妻:専業主婦というケースは十分ありえるので、6.6%が生活保護受給するのは妥当かと思います。

生活保護受給したくない!!70歳で懸命に働くばあちゃん

脳梗塞の後遺症で認知症のじいちゃんを診ることになりました。怒りっぽくなり娘や妻を怒鳴りつけ馬乗りになって殴るようになったそう。認知症のジジィ・ババァの中には「怒りっぽくなる」という方もいる。夜間に傷だらけになって、ばあちゃん、娘が認知症のジジィを連れてきた。「わざわざ夜間に来るんじゃねえよ。次の日の日中に落ち着いてから来ればいいだろ。しかも警察まで呼びやがって。何様のつもりだ、こいつら。」とか思いながら眠たい思いをしながら初めて診察した。

入院日数も1カ月を超える頃に、殴り合いのキッカケとして70歳にもなって働くばあちゃんを気遣って、「もう働くな!生活保護をもらえばいいだろ!」と言って認知症のジジィが怒鳴りつけたのがあったのをばあちゃんから聞いた。私はばあちゃんに「それなら仕事を辞めて生活保護を受給したらいいのではないですか。仕事も大変でしょう。」と言った。私自身、仕事が大嫌いなので、ばあちゃんが「そうですね。生活保護をもらって、ゆっくりでもします。」とでも言うのかな、と思っていたのだが、ばあちゃんは「働くことが生きがいなんです。働けるうちは働いて生活保護は最後の最後にとっておきます。人様の世話になるのは、元気なうちはまだ嫌です。」と答えた。「働くことが生きがいなんです。」とキッパリ言ったばあちゃんにビックリした。

結局は認知症のジイチャンには抑肝散という興奮を鎮める漢方薬と、デパケンという興奮を鎮める薬(てんかん、けいれんにも使ったりする)を内服してもらい、退院してもらうこととなった。ばあちゃんが働くことはジイチャンに許してもらった。私を交えてした面談で渋々だがジイチャンは「分かった。」と言っていた。

高齢者になるまでに計画的に貯めておけ!言い分は分かるけれど。

きちんと年金、生活費、医療費、介護費用など考えて貯蓄をしておくべきだ!!という人たちもいるのは分かる。しかし、こういった不出来なジジイを持ったばあちゃんを見ていると、全てが全て自己責任という言い分はどうなのかなあ、と思ってしまう。

もちろん20代、30代、40代で体が動くのに働かないで精神科に来て生活保護を受給している奴らの3割くらいは、クソなのだけれど、高齢者で生活保護受給する人達はみんながみんなクソとも思えない。

年収300万円が当たり前の時代で、お金の大事さ、貯蓄をしなければいけない、と気づくのが遅く、40代から貯蓄を始めても、とてもじゃないけれど1000万円、2000万円貯めるのは難しい。しかも不動産屋にあおられて数千万円の家のローンを組まされたら目を当てられない。

こういった真面目に生きているばあちゃんを見ると全てが全て自己責任というのはどうかな、と思ってしまう。金を貯めず、自営業でパッパラパッパラ浪費して家族をぶん殴る認知症のジジイは思わず「死ね」と思ってしまうのだが。ばあちゃんは一生懸命働いて、どうしても働けなければ生活保護をもらってゆっくり体を休めて欲しいと思ってしまう。

家族をぶん殴り怒鳴りつけて、精神科病院に入院した、認知症のジジイは何も悪びれる様子もなく「なんでワシは入院しているんだ」「なんで薬を飲まなければいけんのだ」「退院はいつだ」「お前に診察される筋合いはない」などと言って退院していったが。認知症に伴う怒りっぽさが落ち着くまで、退院後数カ月間くらい、私の外来に通うように言って退院していったが、なんの悪びれてる様子がない、クソジジイの様子をみていると退院して、私のところに通院することはないだろう。

ああ、可哀そうなばあちゃん。駄目な夫を持って可哀そうだなあ。体壊さないで頑張って働いてくれよ。