精神科、統合失調症、メンタルヘルス、うつ病、心療内科

精神科医は自殺を防げるか

日本の自殺者数推移

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日本の自殺者数は年間3万人を超えたと言われ、ストレス社会が叫ばれたが、実は2003年の自殺者数32109人をピークにして直近10年間は現象傾向にある。2010年には年間自殺者数は3万人を切り、2010年:29554人、2011年:28896人、2012年:26433人、2013年:26063人、2014年:24417人、2015年:23152人、2016年:21897人と推移している。日本人は真面目で根を詰める性格で、社会にストレスが充満すればするほど自殺者数が増えていると勘違いしがちだ。真実は、その逆で自殺者数は減少傾向にあるのだ。1960年代の自殺者数は年間14000人程度だったので、それに比べれば依然高いが、それでも改善傾向にある。日本のメンタル環境はそれほど悲観するものではないのだろう。

 

精神科医は自殺を防げるか

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精神科医として働いていて、とても気になるのが我々精神科医が自殺者を救えているのか、という疑問だ。上の図は青線が自殺者数、赤線が精神科医数の推移を示している。精神科医数と自殺者数に明らかな相関関係がない。精神科医数を増やしたからといって自殺者数に影響はしない。我々精神科医は臨床の現場で悪戦苦闘しながら自殺者と対峙している。時には自殺者の暗いオーラに飲み込まれそうになりながら必死に神経をすり減らして目の前の一人一人の自殺をしようとしている人達を助けてきたつもりでいた。しかし、統計上は自殺者数と精神科医数は相関しないため、我々臨床の現場での自殺を止めさせようとしている努力は微々たるもので、自殺したい人間は究極的に自殺してしまう、、、そんなことを伺わせる結果になっている。残念だが我々精神科医の力は弱い灯のようなものなのだろう。

 

自殺者数を減らすのは経済だ!

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では自殺者を自殺から救うものは何なのか、、、。それは「お金」だ。上図をみてもらいたい。青線は自殺者数、赤線は完全失業率だ。ピッタリと相関していることが分かる。完全失業率が低ければ自殺者数も減る。完全失業率が高ければ自殺者数も増える。つまり、自殺者を救うものは「安定した雇用」という経済論理なのだ。

精神科の臨床の現場をやっていると休職者、離職者、失業者の自殺率の高さをヒシヒシと感じる。日本人全体で考えると自殺率というのは0.3%程度になる。1000人目の前にいれば、そのうちの3人が自殺する。しかし、休職者・離職者・失業者になると自殺率がグンと高くなる。日々、自分が接している患者達で言えば約1~3%程度と考えていい。自殺リスクは10倍程度に上がる。1000人目の前にいれば約10人~30人が自殺する。

我々精神科医は日々「自殺者エリート予備群」と向き合っているせいか、「世の中にはこんなにも死にたい人がたくさんいるのか!!」とビックリしている。しかし、実際は経済が良くなれば「自殺エリート予備群」が減り、それに伴い自殺者数も減る。逆もしかりなり。

自殺者数を本気で減らしたければ精神科医を増やすのではなく、経済を良くする方が早道のようだ。