精神科、統合失調症、メンタルヘルス、うつ病、心療内科

治らない精神患者の不満

そもそも治らない病気が多い

現代医学の進歩のおかげで病名の解明や新しい治療方法の開発が進みたくさんの病が治るようになってきた。C型肝炎も新しい飲み薬が出来て今までの治療方法と比べ物にならないほど治癒率が高まってきているそうな。肺癌も新しい遺伝子異常が原因の肺癌が見つかり、遺伝子変異をターゲットとした新薬が開発され劇的に効く患者が出てきた。

そんな現代医学の進歩がクローズアップされていると、患者達はまるで「どんな病気も治るのではないか」という錯覚を持って病院を訪れる。「治してくれて当たり前」と考えて病院に来る。そもそもタバコがんがん吸って、食べまくって酒飲んで病気になって病院に来て「さあ!現代医学で治してくれ!治って当たり前だよな!」的な態度で来る患者を見るたびにイラっとしてしまう。そんなすぐイラっとしてしまう自分の修行不足なのか、他の医者達もそう思っているのかは聞いたことがないから分からない。

精神患者も同様だ。薬で治る精神疾患もたしかにはあるが、どうしても一定数、どんな治療を試みても治らない患者がいる。診断が間違っているのか、選択した薬が悪かったのか色々試行錯誤するのだがどうしても良くならない。現段階でも治らない病気、解明されていない病気というのは山ほどあるのだ。

精神科に初めて訪れる患者は病院に来たら全部治してくれるのではないか、何か画期的な治療をしてくれるのではないか、と過剰な期待を寄せて病院を訪れる。しかし現実は治らない病気ばかりなのだ。スッパリ良くなる病気は2~3割くらい?なのではないだろうか。正確に計測したわけではなく体感でそう感じる。

 

患者の不満は看護師・医者へ

「よし!病院でなんでも治してもらうぞ!」と意気込んで通院・入院するものの、実際は治らないことが多いので、期待と現実のギャップに患者や患者家族は大きく落胆する。スッキリよくなれば患者も満足だし、診ている医者・看護師たちも気持ちよく仕事ができる。退院のときなんて気持ちよく「治って良かったね!」なんて気の利いた言葉でもかけられる。

一方、治らない患者の場合、患者本人・家族の不満がチリが積もるように溜まっていく。ドロドロと蓄積していく。そんな不平・不満は看護師・医者に向けられることになる。「この病院の対応が悪い」「なんで手厚く介護・看護してくれないんだ」「携帯電話を何でベッドからかけたらダメなんだ」「ご飯がまずい」「スタッフの対応が冷たい」「まともに診察してくれない」「あの先生はダメだ」「主治医を変えてくれ」「まともな病院に転院させろ」などなど。これでもか!というほど不満がぶちまけられる。

たしかに一人の患者として入院して全然病状が良くならなければ文句のひとつやふたつ言いたくなる気持ちは分かるし、悪くなる現状に耐えられないのだろう。しかし、そうやって医者・看護師にぶつけられる不平・不満は着実に働く医者・看護師のやる気を削いでいく。疲弊させる。それも仕事のうちと割り切るもののやっぱりどこかで限界に達して仕事を休む人や辞めていく人達をチラホラ見てきた。ほとんどの人は仕事と割り切ってルーチンワークのような対応をとり、なんとか自分の心を保とうとする。それが患者や患者家族からしたら冷たい態度ととられてしまうのかもしれない。確かに冷たい態度なのかもしれないけれど、それはなんとか自分の心を保とうと必死にもがく医療関係者の防衛策なのだ。

 

看護師のストレスは医者へ

患者や患者家族の不平・不満は看護師か医者にぶつけられてくる。医者は不平・不満を言われてもただただ耐えて患者と向き合っていくしか方法はない。事務長や院長に相談したところで、そもそも治らない病気なのだから答えが出るわけではないから、ただただ耐えている。医者どうしでグチをこぼして紛らわしている同僚もいたりする。実際に主治医として患者を担当すると治らないことに対する患者の不満にじっと耐えることが多くなった。本当に心身すり減らす気持ちで向き合ってきた。

看護師に怒りが向けられた場合は看護師も辛い思いをする。治らなくて日々弱っている患者の看護をする姿を見ていつも「申し訳ない」という気持ちで一杯になってくる。自分が看護師の立場になって、日々弱っている患者のオムツを変えなければいけない、食事の介助をしなければいけない、となったらどれだけしんどい気持ちになるのだろうか・・・そう思うといたたまれない。

看護師のストレスは医者に向けられることが多い。「患者さんが全然良くならない」「治療方法が間違っているのではないか」「他の医者にも相談してくれ」「他の医者に患者をふってくれ」「自分でできないなら大きい病院に転院させろ」辛らつな言葉や陰口が医者に向けられる。

医者は結局患者本人・家族・看護師からの不平・不満を受け入れるしかないのだ。日々臨床に携わってきて、腕の良さとかも大事かもしれないけれど、治らない患者に向き合う度に「忍耐」「耐える」というチカラをつけさせてもらっているような気がする。ただただ耐える。この忍耐力も医者として重要な力なのだろう。でも本当にピークまで達すると辞めたくなってくる。はあ・・・辞めたい。この苦しみから逃れたい。辞めたらどんなに楽になるのだろうか。